【視察報告】人口減少時代、横浜市の都市構造をどう描くか――福岡市「都市計画マスタープラン」を視察

こんにちは。柏原すぐる(横浜市会議員・鶴見区選出)です。

8月18日、横浜市会「未来のまちづくり推進特別委員会」の行政視察で、福岡市を訪問しました。

今回のテーマは、「福岡市都市計画マスタープラン及び都市機能等について」です。

前日は、JR九州など加盟する民間企業が中心となって事務局を担う「博多まちづくり推進協議会」で、博多駅周辺のエリアマネジメントについてお話を伺いました。

▼前日の視察報告はこちら

今回は、そこから一段視点を広げて、福岡市全体をどのような都市構造にしていくのかという行政側の考え方について、福岡市住宅都市みどり局都市計画部さんから説明を受け、意見交換を行いました。

特に私が確認したかったのは、

「人口減少時代に、どこに都市機能を集め、どこを守り、横浜市の郊外部をどう維持していくのか」

という点です。

福岡市と横浜市では、人口動態も地形も都市としての役割も異なります。

だからこそ、単純に制度をコピーするのではなく、その「都市全体をどう設計しているのか」という考え方に注目して視察しました。

福岡市役所で都市計画マスタープランについて説明を受けている視察風景

福岡市住宅都市みどり局都市計画部から、都市計画マスタープランや都市機能誘導について説明を受けました。

福岡市が目指す「コンパクトでコントラストのある都市」

福岡市は、2026年2月に都市計画マスタープランを改定しています。

掲げているのは、

「コンパクトでコントラストのある持続可能な都市」

という考え方です。

簡単に言えば、市内のどこも同じように開発するのではありません。

博多・天神を中心とする「都心部」、東部・南部・西部の「広域拠点」、身近な「地域拠点」、そして「日常生活圏」。さらに、その外側には農山漁村地域や自然環境があります。

それぞれの地域に求める役割を明確にして、都市機能を集める場所と、住宅環境や自然を守る場所にメリハリをつけるという考え方です。

福岡市「都市計画マスタープラン」

【図①:福岡市都市計画マスタープラン「都市空間構想図」】

出典:福岡市都市計画マスタープラン

この図を見ると、福岡市の考え方がかなり分かりやすくなります。

都心部には高度な商業・業務・観光などの都市機能を集める。

一方、地域の拠点では、市民生活を支える商業やサービス、交通結節機能などを確保する。

さらに、それらを鉄道や道路などのネットワークでつなぐ。

「すべての地域を同じように発展させる」のではなく、「地域によって役割を変える」という都市構造が、かなり明確に示されています。

人口が増えている福岡市でも、市街地をむやみに広げない

ここで横浜市との大きな違いがあります。

福岡市は、現在も人口が増加している都市です。

視察でも、「人口が増えているのであれば、市街化区域をさらに広げてもよいのではないか」という議論があるとの話がありました。

しかし福岡市としては、日本全体では今後人口減少が進むことを見据え、基本的に都市をむやみに外側へ拡張しないという考え方を維持しています。

市街化区域と市街化調整区域の線引きを大きく変えるのではなく、既にある鉄道、道路、上下水道などの都市基盤を活用しながら、拠点を強化していく。

また、一定以上の標高の高い場所(80m以上)では新たな面的開発を抑え、周辺の自然環境を守るという考え方についても説明を受けました。

これは、既に人口減少局面に入っている横浜市にとって、さらに重要な論点だと思います。

横浜市では「郊外部をどう維持するか」が大きな課題

横浜市は福岡市とは都市の成り立ちが大きく違います。

福岡市は、都心部を中心に比較的コンパクトな市街地が形成され、周囲には海や山があります。

一方、横浜市は市域が広く、高度経済成長期以降、鉄道沿線を中心に住宅地が大きく広がってきました。

特にこれから課題となるのが、郊外部です。

かつて子育て世代が一斉に入居した住宅地では高齢化が進み、人口も減少していきます。

そうした中で、

駅前の商業をどう維持するのか。
病院や福祉施設をどこに配置するのか。
バスなどの地域交通をどう維持するのか。
学校や公共施設をどう再編するのか。
若い世代にどう選んでもらうのか。

こうした問題を、それぞれ別々に考えるだけでは難しくなってきます。

「この駅、この地域を将来どのような生活拠点にしていくのか」という都市計画上の方向性と、交通・住宅・福祉・商業・公共施設政策を連動させる必要があります。

天神ビッグバン――規制緩和を「まちへの還元」につなげる

福岡市の都市政策を象徴する取組の一つが「天神ビッグバン」です。

福岡空港が都心部に非常に近い福岡市は便利である一方、航空法による建物の高さ制限があります。

そうした制約の中で、高さ制限の緩和や福岡市独自の容積率緩和制度などを組み合わせ、老朽化したビルの建替えを促しています。

ただし、単に「大きなビルを建ててもいいですよ」という規制緩和ではありません。

建替えにあわせて、歩行者空間、広場、地下通路、緑、アート、防災機能など、まち全体にプラスとなる空間を民間側にもつくってもらうという考え方です。

福岡市「天神ビッグバン」

天神ビッグバンで建替えが進んだ街並み

天神地区では、建物の更新だけではなく、足元の歩行者空間や緑も含めて街並みが変わっています。

視察では、民間ビルの建替えにあわせて地下通路のネットワークをつなげていく取組についても説明を受けました。

一つのビルの中だけで完結させるのではなく、隣の建物、道路、地下空間とつないでいく。

この「個別開発を、まち全体の改善につなげる」という発想は、改めて横浜市でも参考になると感じました。

緑やアートも「都市機能」の一つとして考える

そして、実際に天神を歩いて印象に残ったのが、緑やアートの存在です。

建物を新しくするだけではなく、その足元に緑や広場をつくり、特徴的なアートを配置する。

福岡市としても、民間開発にこうした要素を取り入れてもらうことを積極的に誘導しています。

天神地区の特徴的な緑のアートモニュメント

視察中には「マイクラのようで目を引く」と話題になった、緑をモチーフにした特徴的なアート。「マイクラの木」と呼ばれたりするそうです。まちの中に、待ち合わせ場所にもなるような「記憶に残る場所」をつくることも重要だと感じました。

視察で議論したのは、こうしたアートや緑が単なる「飾り」ではないということです。

「あの木のところで待ち合わせよう」

「あの広場に行ってみよう」

と思える場所があることで、人の動きや滞在が生まれます。

建物の床面積だけでは測れない、都市空間の質をどう高めるか。

横浜市の再開発でも、もっと意識してよい視点だと思います。

博多コネクティッドも、同じ都市政策の延長線上にある

前日に視察した博多駅周辺では「博多コネクティッド」が進められています。

こちらでも、ビルの建替えを促しながら、周辺とつながる歩行者空間、広場、緑化、ユニバーサルデザインなどを求め、それに対してインセンティブを付与しています。

福岡市「博多コネクティッド」

博多駅周辺・博多コネクティッドで更新が進む街並み-新しくできた西日本シティビル。福岡空港の離陸ルートのため天神よりも高さ規制が低く抑えられている。

Park-PFIでリニューアルされ最近オープンしたばかりの明治公園

博多駅周辺でも、民間ビルの建替えと公共空間の改善を一体として進めています。

前日に博多まちづくり推進協議会から話を聞き、翌日に福岡市の都市計画部門から説明を受けたことで、一つ腑に落ちたことがありました。

民間のエリアマネジメントと、行政の都市計画が別々に動いていない。

行政が都市全体の方向性と制度をつくる。

民間が建物を更新し、公共的な空間をつくる。

地域のエリアマネジメント団体が、そこを実際に使い、にぎわいを生み出す。

この循環が非常に重要なのだと思います。

一方で、福岡市をそのまま横浜市にコピーはできない

もちろん、福岡市でうまくいっているから、横浜市もそのまま同じことをすればよい、という話ではありません。

今回の意見交換でも改めて感じたのが、都市ごとの条件の違いです。

福岡市は九州の中心として、人や企業を周辺都市から集める側面が強い都市です。

一方、横浜市は東京という巨大都市の隣にあり、横浜市内に住みながら東京へ通勤する方も非常に多い。

また、福岡市は山や海によって市街地の広がる範囲が比較的明確ですが、横浜市は丘陵地にも住宅地が広く形成されています。

同じ「政令指定都市」でも、都市の役割も地形も人口構造も全く違います。

福岡市の担当者からも、逆に横浜市の都市計画の取組を参考にしているとのお話がありました。

どちらが進んでいるという単純な比較ではなく、それぞれの都市が、自らの条件に合わせて制度を組み立てることが重要なのだと思います。

福岡市と横浜市を比べると

以下のようになります。

福岡市横浜市
人口規模約167万人約376万人
人口動向現在も増加。2040年頃まで増加を見込む既に人口減少局面。今後さらに減少を見込む。18区で状況が異なる
都市としての特徴九州の中枢都市として周辺から人・企業を集める。支店経済でもある東京に隣接し、市外へ通勤・通学する市民も多い
都市構造都心部を中心に比較的コンパクト市域が広く、多数の鉄道駅と郊外住宅地を抱える
都心の代表例天神・博多横浜駅周辺・関内・みなとみらい等
まちづくりの代表例天神ビッグバン、博多コネクティッド横浜都心部の再開発、みなとみらい、港北ニュータウン等
今後の大きな課題成長を続けながら、将来の人口減少に備える人口減少・高齢化の中で、郊外部を含む都市機能をどう維持・再編するか

同じ政令指定都市でも、人口動態、地形、周辺都市との関係は大きく異なります。

そのため、福岡市の制度をそのまま横浜市に当てはめるのではなく、「拠点ごとの役割を明確にする」「民間開発と公共的な空間整備を連動させる」「将来の人口減少を見据えて都市をむやみに広げない」といった考え方を、横浜市の実情に合わせてどう取り入れるかが重要だと感じました。

むしろ横浜市が先行して、実行していることもありますし、立地適正化計画や土地利用誘導戦略などの策定もこうした課題や市としての調査研究などを通じて実施していくものと認識しています。

横浜市に活かしたい5つの視点

今回の視察を通じて、横浜市で特に考えていきたいことがあります。

① 都心と郊外、それぞれの「役割」をもっと明確にする

すべての地域に同じ機能を求めるのではなく、横浜駅周辺のような都心と、郊外部の生活拠点では目指す姿を変える必要があります。

② 郊外部では「駅+交通+生活機能」をセットで考える

駅前だけを整備するのではなく、その周辺の住宅地から駅までどう移動するのか、買い物や医療、福祉、子育て機能をどう確保するのかまで一体で考える必要があります。

③ 規制緩和と、市民への還元をセットにする

容積率などの規制を緩和するのであれば、歩行者空間、緑、広場、防災、子育てなど、地域側にも明確なメリットが残る仕組みにする。エリアによっては「アート」をもっと街に取り入れる。

④ 人口減少を前提に、都市を広げすぎない

新たな市街地をつくり続けるのではなく、既存の鉄道や道路、公共施設を生かしながら、都市機能を適切に配置していく。

⑤ マスタープランを「実際のまち」に落とし込む

都市計画マスタープランを作って終わりではなく、民間開発、公共施設、交通、住宅政策、エリアマネジメントまで同じ方向を向かせる。

福岡市の区別計画はさっぱりしたものでしたので、比較すれば横浜市の区別計画は相当力を入れているとも言えますが、頑張ってほしいところです。

横浜市もちょうど、都市計画を見直している

今回の視察が重要だと感じるもう一つの理由は、横浜市自身も今、都市計画の大きな転換期にあるからです。

横浜市では2025年5月、「横浜市都市計画マスタープラン(全市プラン)」を改定しました。

横浜市「都市計画マスタープラン」

そして現在、地域別構想についても見直しが進められています。

横浜市はすでに人口減少局面に入り、特に郊外部では、高齢化や人口減少に対応したまちづくりが避けて通れません。

だからこそ今、

「20年後、30年後に、どこにどんな都市機能を残すのか」

という議論をしておく必要があります。

鶴見のまちづくりにもつなげたい

これは横浜市全体だけの話ではありません。

鶴見区でも、鶴見駅周辺をどのような拠点としていくのか。

京浜臨海部と駅周辺をどうつなぐのか。

住宅地から駅までの交通をどう確保するのか。

人口構造が変わる中で考えなければならない課題は数多くあります。

福岡市を見て感じたのは、個別の施設や事業から考えるのではなく、まず将来の都市構造を描き、その中に一つ一つの政策を位置付けることの重要性です。

人口が増えている福岡ですら「広げない」。では横浜市はどうするのか

今回の視察で、天神ビッグバンの華やかな再開発以上に印象に残ったのは、人口が増えている福岡市でも、市街地をむやみに広げないという考え方でした。

福岡市では、人口が増えている今でも、将来は人口減少局面に入ることを前提に、現在の市街地や既存の都市基盤をできるだけ活用しながら都市を維持していく方針をとっています。

つまり、都市計画は「どこを開発するか」だけではなく、「どこまで都市にするのか」「どこを拠点として残すのか」まで決めるものだということです。

この話を聞きながら、考えていたのは横浜市のことでした。

横浜市はすでに人口減少局面に入っています。

しかも、福岡市のように比較的コンパクトな都市構造ではなく、鉄道沿線や丘陵部まで住宅地が広がり、多くの駅を中心にそれぞれの生活圏が形成されています。

だからこそ横浜市では、単に「郊外部を活性化する」というだけでは不十分だと思います。

どの駅を地域の生活拠点として強くしていくのか。

どこに医療、福祉、買い物、子育てなどの機能を集めるのか。

どの地域は新たな開発よりも、住環境や自然を守ることを優先するのか。

人口が減っていく中で、すべての地域、すべての駅を同じように維持・発展させることは難しくなります。

だからこそ、駅ごと、地域ごとに役割を整理し、交通、住宅、公共施設、民間開発などを同じ方向に動かしていく必要があります。

鶴見区についても同じです。

鶴見駅周辺をどのような拠点にしていくのか。

京浜臨海部と駅周辺をどうつなぐのか。

駅から離れた住宅地の移動手段や生活機能をどう維持するのか。

これらを個別の課題として考えるのではなく、将来の鶴見区の都市構造を先に描き、そこから必要な政策を逆算することが重要だと感じました。

今回、福岡市から持ち帰りたいのは、個別の制度をそのまま真似することではありません。

将来どういう都市を残したいのかを先に決め、その都市像に合わせて、土地利用、交通、民間開発、公共施設を動かしていく。

人口がまだ増えている福岡市も、将来を見据えた議論をしている。

人口減少が始まっている横浜市は、なおさら先送りできないテーマだと思います。

視察を受けれてくださった福岡市様、ありがとうございました。

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最後までご覧いただきありがとうございました。

日本維新の会横浜市会議員団

柏原すぐる

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