海軍道路の桜が消える前に|老木化と倒木危険、そして「再生」へ向かう600本の桜の物語
こんにちは。柏原すぐる(横浜市会議員・鶴見区選出)です。
「桜並木が切られた」「上瀬谷の原風景が壊れた」──GREEN×EXPO 2027(横浜花博)の開催準備が進む中で、こうした声をいただくこともあります。
率直に申し上げて、長年地域に親しまれてきた海軍道路の桜並木が姿を変えていくことに、寂しさや不安を感じる方がいらっしゃるのは当然のことだと思います。
ただ、この問題は「花博のために桜が切られた」という単純な話ではありません。事実関係を丁寧に整理してみると、そこにあるのは「全国共通の老木化問題」と、「横浜市と市民が協働して桜を未来へつなぐ」という再生の物語です。本稿では、できる限り客観的な事実をもとに、現状と今後をお伝えします。
海軍道路の桜並木とは
海軍道路(環状4号線の一部)は、瀬谷区の瀬谷中学校前交差点から八王子街道までの約3kmの道路です。北半分は旧米軍上瀬谷通信施設の跡地内を走ります。
1970〜80年代(昭和50年代)にソメイヨシノなどが植えられ、1995年(平成7年)ごろには約600本の桜が並ぶ、横浜屈指の桜の名所として親しまれてきました。地元の方にとっては、卒業式や入学式の風景の中に必ずあった、まさに「記憶の風景」だと思います。
老木化が進む現実──30年で600本→202本へ
しかし、植栽から40年以上が経過し、桜の老木化が急速に進んでいます。

横浜市の発表によれば、1995年(平成7年)に約600本あった桜は、令和5年度には202本まで減少しています。さらに、直近の樹木診断では、残っている168本のうち、健康状態が良好な木はわずか19本。残り149本は腐朽が進行している、または進行が予測される状態です。


そして横浜市は、「このまま放置すれば、5年程度で桜並木そのものが消滅する」と予測しています。
つまり、何もしなくても桜並木は失われる──これが、まず押さえておくべき出発点です。
老木化した街路樹の倒木事故は全国で相次いでいる
老木化した街路樹の倒木事故は、海軍道路だけの話ではありません。全国的に深刻な問題となっています。
桜に関しては、京都・清水寺(2024年4月、大けが)、東京・砧公園(2026年3月、軽傷)、駒沢オリンピック公園、千鳥ヶ淵など、各地で倒木事故が発生しています。
さらに、街路樹全般に目を広げれば、東京都内では2024年、老木化したイチョウの枝が折れて歩行者が下敷きとなり、亡くなる事故も発生しました。命に関わる事故が、現実に起きているのです。
「桜は美しい」──これは間違いありません。しかし、美しさの裏で、老木化した木は人命を脅かすリスクを抱えている。これも、目を背けてはいけない事実です。
特に海軍道路は、通学路として使う子どもたち、毎日散歩する高齢の方、ドライバー──多くの方が日常的に行き交う場所です。**「危険を放置した結果、誰かが命を落としてからでは遅い」**という観点は、議員として強く意識せざるを得ません。
「伐採」ではなく「再生」へ──市民の声が動かした計画
実は、この問題が浮上した当初、横浜市は道路拡幅工事に伴い、桜の大部分を伐採する方針を示していました。これに対して、市民有志が約3万6千人分の署名を市に提出し、計画の見直しを強く求めました。
3万6千人という数字は、横浜市民の桜への愛着の大きさを物語っています。私自身、この市民の声が市政を動かした事例として、非常に意義深く受け止めています。
その結果、横浜市は2022年度に「旧上瀬谷通信施設地区 新たな桜の名所づくりに向けた基本計画」を策定し、伐採一辺倒ではなく、以下の方針へと転換しました。
- 倒木の危険性が低い健全な桜は、できる限り跡地の新公園へ移植
- 危険な桜については伐採やむなし、跡には病害虫に強い「コシノヒガン」を植樹
- 将来的には、海軍道路と新公園を合わせて約40品種・600本以上の桜を植樹
「失われる」のではなく、「次の世代に引き継ぐ形で再生する」──市民の声と行政の知恵が、計画をその方向へ導いたのです。

新しい品種「コシノヒガン」とは
植え替えの中心となるのはコシノヒガンという品種です。
ソメイヨシノに似た淡いピンク色の花を咲かせる桜で、以下のような特長があります。
- 病害虫に強く、長寿命
- 開花時期や花の色がソメイヨシノに近い
- ソメイヨシノほど成長が早くないため、車道や歩道に影響を及ぼしにくい
さらに、新たに整備される公園には、早咲きから遅咲きまで約40品種の桜が植えられる予定です。これにより、長い期間にわたって多様な桜の花を楽しめる名所として、地域の魅力がさらに高まることが期待されます。
「桜の記憶」を次世代へつなぐ取り組み
単に植え替えるだけではありません。地域の記憶をつないでいく取り組みも同時に進められています。
例えば令和5年2月、横浜市立上瀬谷小学校では5年生児童が接ぎ木イベントに参加し、海軍道路の桜を次世代へつなぐ活動が行われました。
今年(令和8年)1月24日には、コシノヒガン10本の植樹式が行われ、地元の子どもや高校生、自治会町内会長などが土かけと水やりに参加しました。「これまでの桜並木が無くなると聞いて悲しくなったけれど、新しいシンボルとして未来につながって欲しい」──植樹式に参加した高校生のこの言葉は、まさに今回のプロジェクトの本質を表していると感じます。

「森林破壊」ではなく、未来への投資
改めて整理します。海軍道路の桜並木をめぐる動きは、
- そもそも放置すれば5年で消滅する老木化の現実
- 全国で起きている倒木事故、死亡事故という安全リスク
- 市民3万6千人の署名により「伐採」から「再生」へと転換した計画
- 健全な桜は移植、危険な桜は植え替えという合理的な対応
- 約40品種・600本以上という、より豊かな桜の名所づくり
という、多くの要素から成り立っています。「森林破壊」「自然破壊」という単純な批判だけでは語れない、桜の命と人の安全の両方を守るための現実的な選択だと、私は受け止めています。
維新としても、現実を直視した上で、長期視点で持続可能な解を選び取るという姿勢は、政策運営の根幹だと考えています。感情的な反対や、逆に問答無用の伐採推進ではなく、市民の声を丁寧に聞きながら、リスクと魅力の両方を冷静に天秤にかけて判断する──今回の桜並木の再生計画は、その一つの形だと思います。
おわりに──再生の一歩を踏み出した桜たちに、ぜひ会いに来てください

長年、地域の象徴であった海軍道路の桜並木は、姿を変えながら、より多様で長く楽しめる新しい桜の名所として、次世代へ受け継がれていきます。
GREEN×EXPO 2027(横浜花博)は、自然を「壊す」イベントではなく、上瀬谷の自然と歴史を未来へつなぐ機会でもあります。2027年の開幕では、再生の一歩を踏み出した桜たちにも、ぜひ会いに来てください。
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最後までご覧いただきありがとうございました。
日本維新の会横浜市会議員団・無所属の会
柏原すぐる

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