【視察報告】秋田市|学力向上の先進地で見えた「人」と「チーム」の力~横浜市鶴見区と同じ人口なのに教育委員会が一つある~

こんにちは。柏原すぐる(横浜市会議員・鶴見区選出)です。

こども青少年・教育委員会の行政視察として、秋田市を訪問しました。

新幹線あきたこまちから


秋田市は、全国学力・学習状況調査で毎年上位に入るなど、「学力向上の先進地」として全国から注目されています。今回は、その背景にある取組を教育委員会の学校教育課や学事課の職員の皆さんから伺い、現地の教育文化を肌で感じることができました。

※正式な行政視察の報告書は別途作成されますので、本記事は柏原の個人的な視察報告です。


📍秋田市の概要と横浜市・鶴見区との比較

まずは秋田市と横浜市、そして柏原の地元である鶴見区の教育規模や組織体制を比較してみました。

秋田市と鶴見区は人口規模が同じなのですが、秋田市は中核市で鶴見区は行政区という大きな違いがあります。

指標秋田市横浜市(鶴見区)横浜市(全体)
人口約29万人約30万人約377万人
小学校数39校(私立無し)23校(私立は1校)351校
中学校数20校(私立無し)9校(私立は3校)177校
児童生徒数約1.8万人約2万人約26万人
教職員数(教員等)約1,280人―(無し)約18,000人(小中学校分概算)
市議会議員数36人7人(選出)86人
教育委員数5人―(無し)5人
教育長1人―(無し)1人

秋田市は人口規模では鶴見区と近しい一方で、教育委員会の体制は独立した組織として構築されており、ここが横浜市との決定的な違いです。

平成22年から分権型教育行政を目指し4方面毎に教育事務所を設けた横浜市ですが、それでもなお大きすぎる課題があります。

また、議会もありますので、秋田市議会議員は約29万人が住む秋田市のことを議論するのが仕事ですが、鶴見区選出の横浜市会議員は横浜市全体を考える責務があります。

秋田市役所1階吹き抜け。各フロア全体が見える構造になっています。


🎯 秋田市の教育の重点方針

秋田市では毎年「学校教育の重点」を定め、学校と教育委員会が共通目標を持って教育活動を展開しています。重点項目は以下の6本柱です。

  1. 豊かな人間性の育成
  2. 確かな学力の育成
  3. 健やかな心と体の育成
  4. 今日的な課題に対応した教育の充実
  5. 系統性・連続性を踏まえた教育の充実
  6. 家庭・地域・関係機関との連携体制の充実

市内全校でこの方針に沿った授業改善と学校運営が進められています。

また、以下の点も末尾に整理されており、横浜市で様々問題が起きているような事項に対する方針が網羅されており、先生方が手に取りやすいように思いました。

■ 危機管理上の留意点

  • 児童虐待事案への対応
  • 食物アレルギーに関する危機管理
  • 異物混入に関する危機管理
  • 個人情報の取扱いに関する危機管理
  • 交通事故や不審者事案への対応
  • いじめ防止チェックリストの活用

以下は個人情報の取扱いに関する事項の掲載例です。

令和7年度秋田市学校教育の重点

https://www.city.akita.lg.jp/kyoikuiinkai/1010821/1008738.html


🧑‍🏫 全校対象の「授業研究会」と年間64講座の研修

秋田市では、すべての学校を対象に「全市一斉授業研究会」を年1回実施。
すべての学級の授業を1日かけて参観し、指導主事・大学教員などがチームで助言します。これは校長会の要望で始まった文化であり、教育委員会と学校現場との信頼の厚さが感じられました。

また、教員向けには年間64件の研修講座が設けられており、テーマ別(学力、ICT、特別支援など)に幅広く対応。こうした研修文化が秋田の授業力を支えています。


👨‍👧‍👦 少人数学級と教員加配の工夫

秋田市では、小学校3〜6年生および中学校主要教科で、20人規模の少人数指導を導入。
教員を非常勤等で加配し、30人学級であっても少人数授業を可能にしています。

ただし、人員不足により35人学級での運用となり、加配学級数が減少していることも報告されました。


📊 EBPMによる学力調査活用と独自調査

全国学力・学習状況調査に加えて、秋田市では次のような独自調査も実施しています。

調査名対象学年時期
秋田っ子・あい調査小5〜中3毎年7月
秋田っ子・あり調査小5〜中3毎年12月
秋田県学習状況調査小4・中1毎年12月

調査活用の3原則は以下の通り:

  1. 調査は「1つの情報」に過ぎない
  2. 目的は「授業改善」である
  3. 活用の仕方は「各学校に委ねられる」

全国調査を含めて調査結果を分析し、各学校の取り組みにて改善を図っているとのこと説明がありました。横浜市のように児童生徒個人のたて(時間の経過)による学習震度などの分析までは取り組めていないようでしたが、各学校や学年、クラス単位での授業改善に反映させているようです。


💻 ICT環境整備と支援体制

秋田市では、GIGAスクール端末の更新・再整備が進行中です。

  • 端末再整備:令和7年度に入替を予定
  • 通信対策:一部校の通信不具合に対し、ローカルブレイクアウト回線へ移行中
  • 支援員体制:1名で2〜3校を担当し、授業支援・保守・教員支援を実施

端末やインフラ整備にとどまらず、人材による運用支援に力を入れています。


🏠 家庭支援と地域の教育力

秋田市では経済状況に応じた支援も充実しています:

  • 就学援助、特別支援教育奨励費(国の事務業)
  • 遠距離通学費補助(上限あり)
  • 全国大会出場児童への補助
  • Wi-Fiルーター貸与(希望制)

また、塾通い率は小学生10〜15%、中学生25%程度と低く、「学校中心の学び」が地域に根づいていることも特徴です。


🤝 教育文化と人材育成

教育現場では「職員室で自由に意見が言える文化」「管理職との信頼関係」があり、教職員組合による信任投票でも不信任ゼロが続いているとのお話もありました。

教員採用は県が担い、市町村に配属。Uターン就職や秋田大学出身者を含め、令和6年度の新規採用は48名でした。


✍️ まとめ|横浜に活かしたいこと

秋田市の視察を通じて、以下の点が特に印象に残りました:

  • 教育委員会・学校・地域が連携した「チームによる支援体制」
  • 教員の指導力向上を重視する組織文化
  • 家庭や地域との一体的な支援のあり方
  • ICT整備と人的支援のセット運用

秋田市の取組は、都市部・大規模校の多い横浜市においても、多くの示唆を与えてくれるものです。
特に、一人ひとりに寄り添い、地域全体で支える教育のあり方は、ぜひ横浜市でもそうあってほしいと思います。

都会は豊かではなかったのでしょうか?

大都市で大組織がゆえに教員、児童生徒それぞれ一人一人に寄り添えないのは本当に残念でなりませんので、今回の学びも活かしながら引き続き提言をしていきたいと思います。


秋田市議会本会議場の様子

なお、横浜市教育委員会の組織に関する問題についてはこちらをご覧ください。

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最後までご覧いただきありがとうございました。

日本維新の会横浜市会議員団・無所属の会

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