【視察報告】大阪府の高校授業料無償化制度から考える、横浜市の教育費負担軽減と学校選択のあり方
こんにちは。
横浜市会議員、鶴見区選出の柏原すぐるです。
日本維新の会・無所属の会として、大阪府教育委員会を訪問し、高校授業料無償化制度について視察を行いました。

大阪府では、所得制限のない高校授業料の完全無償化に向けた取組が国に先駆けて進められてきました。
今回の視察では、制度導入の経緯、制度の目的、対象範囲、財源確保の考え方、導入後の効果、そして公立高校・私立高校それぞれに生じている課題について説明を受けました。
横浜市においても、子育て世帯の教育費負担や、子どもたちの進路選択のあり方は大きなテーマです。
大阪府の取組から、横浜市の教育政策に何を活かせるのか、という視点で報告します。
高校授業料無償化は「家計支援」だけではない
大阪府の高校授業料無償化制度は、単なる家計支援策ではありません。
制度の大きな柱は、次の2つです。
1.教育の機会均等
家庭の経済状況にかかわらず、すべての子どもたちが学びの機会を得られるようにすること。
2.学校選択の自由
公立・私立という区分に左右されず、生徒一人ひとりが、学校の特色や教育内容、自分の希望や適性に応じて進学先を選べるようにすること。
特に印象的だったのは、制度の出発点が「公立か私立か」ではなく、子どもたちが行きたい学校を選べる環境をつくるという考え方にある点です。
家庭の経済的な事情によって、本来希望していた進路をあきらめることがないようにする。
この理念は、横浜市にとっても非常に重要な視点だと感じました。
大阪府の制度導入の経緯
大阪府では、平成22年度に国の就学支援金制度が創設されたことに合わせて、府独自の授業料支援制度を開始しました。
当初は、所得制限のある制度として始まりましたが、その後、支援対象を拡充してきました。
そして、令和5年4月に吉村洋文知事が、所得制限のない高校授業料完全無償化を目指すことを表明しました。
背景には、すべての子どもたちが、所得や世帯状況にかかわらず、自らの可能性を追求できる社会を実現したいという考え方があります。
子育て世帯の教育費負担を軽減するとともに、子どもたちが自分に合った学校を選べる環境を整える。
大阪府では、教育を「将来への投資」と位置付けて、制度設計が進められてきました。
制度の対象
大阪府の制度は、私立高校だけを対象にしたものではありません。
対象となる学校は、幅広く設定されています。
私立学校等
・私立高校
・定時制高校
・通信制高校
・専修学校高等課程
・各種学校
公立・国立学校等
・府立高校
・市立高校
・国立高等学校
・特別支援学校高等部
・大阪公立大学工業高等専門学校
さらに、大阪府内だけではなく、近畿1府4県、具体的には、滋賀県、京都府、兵庫県、奈良県、和歌山県の国公私立高校等についても対象としています。
大阪府民である生徒が、府外の学校を選択する場合にも支援対象となるよう、制度の対象範囲を広げている点も特徴です。
令和8年度に全学年で完全無償化へ
大阪府では、所得制限の撤廃を段階的に進めています。
令和6年度
高校3年生を対象
令和7年度
高校2年生・3年生を対象
令和8年度
高校1年生から3年生まで全学年を対象
令和8年度には、所得制限のない授業料完全無償化を実現する予定です。
通常、段階実施というと、1年生から始めて、順次2年生、3年生へ広げていく形が想定されます。
しかし大阪府では、まず高校3年生から始める、いわば「逆の段階実施」を採用しています。
その理由としては、
・すでに在学している生徒も支援対象とするため
・授業料負担が進路選択に大きく影響するため
・受験生や保護者への周知期間を確保するため
・入学年度による不公平感をできる限り軽減するため
といった説明がありました。
制度変更が生徒や保護者の進路選択に直結することを踏まえ、非常に丁寧に制度移行を行っていると感じました。
大阪府独自のポイント
授業料だけでなく「授業料等」を支援
国の就学支援金制度は、基本的に授業料が対象です。
一方で、大阪府の制度では、授業料に加えて、毎年継続的に必要となる施設整備費等も含めた「授業料等」を支援対象としています。
高校に通う上では、授業料以外にもさまざまな費用がかかります。
大阪府では、毎年発生する経常的な負担についても、できる限り支援の対象にすることで、保護者の実質的な負担軽減を図っています。
一方で、入学金のように入学時に一度だけ発生する費用については、授業料無償化制度とは別の支援制度で対応する考え方となっています。
このように、何を無償化の対象とし、何を別制度で支えるのかを整理しながら、制度設計が行われていました。
授業料無償化と教育の質の向上を両立
今回の視察で特に重要だと感じたのは、大阪府が授業料無償化と教育の質の向上を一体的に進めている点です。
授業料を無償化すると、学校側からは「授業料に上限が設けられることで、教育の質に影響が出るのではないか」という懸念が出ます。
実際に、私立学校団体からは、学校経営や教育内容への影響について、さまざまな意見があったとのことでした。
そこで大阪府では、標準授業料を60万円から63万円へ引き上げるとともに、私立高校等への経常費助成を増額しています。
具体的には、
・学校負担額を約9.5億円から約7.9億円へ軽減
・経常費助成を約13億円増額
するなど、無償化制度に参加する学校の負担軽減と、教育環境の充実を両立させる制度設計となっています。
単に授業料を無償にするだけではなく、学校の特色づくり、教育内容の充実、教育環境の改善につなげていく。
この視点は、横浜市が教育政策を考える上でも大変参考になるものです。
財源確保の考え方
制度完成年度である令和8年度には、非常に大きな財政規模となります。
説明では、制度に関する主な規模として、
・国の就学支援金
・大阪府独自の授業料支援補助金
・私立高校等への経常費助成
など、多額の予算が必要になるとのことでした。
大阪府の場合、これまでの財政改革や財政調整基金の積立など、独自の財政運営の積み重ねがありました。
説明の中でも、今回の完全無償化の財源については、「大阪府独自の事情もある」との話がありました。
つまり、どの自治体でもすぐに同じ制度を実施できるわけではありません。
横浜市に置き換えて考える場合には、単に「よい制度だから導入すべき」という話ではなく、財源、制度対象、国制度との役割分担、他の子育て支援策との優先順位を丁寧に整理する必要があります。
ただし、教育への投資を将来への投資として位置付け、限られた財源の中で何を優先するのかという考え方は、横浜市でも正面から議論すべきテーマです。
制度導入による効果
大阪府では、授業料無償化制度により、保護者の満足度は高いとの説明がありました。
特に、所得の低い世帯では、教育費負担の軽減効果が大きく、高校生活や進路選択に影響があったと回答する割合が高いとのことです。
また、所得が高い世帯においても、無償化制度が高校生活やその後の進路に影響したと回答する方が一定数いるとの説明がありました。
これは、教育費負担の軽減が、単に低所得世帯だけでなく、幅広い子育て世帯にとって大きな意味を持っていることを示しています。
さらに、高校入学者数の推移を見ると、私立高校への進学割合が上昇しています。
制度創設当初と比べ、私立高校を選択する生徒の割合が増えており、授業料負担を理由に私立高校進学を断念するケースが減少している可能性があります。
子どもたちが、学校の特色や教育内容を見て進学先を選べるようになってきていることは、制度の大きな効果だと感じました。
一方で見えてきた課題
一方で、制度導入によって新たな課題も生じています。
特に大きいのは、公立高校への影響です。
私立高校を選択する生徒が増える一方で、公立高校では定員割れや学校再編の課題が生じています。
大阪府でも、公立高校の魅力向上や情報発信の強化が必要であるとの問題意識があり、公立高校改革のアクションプランを策定しているとの説明がありました。
授業料が無償化されることで、公立・私立の費用差が小さくなります。
その結果、各学校は、より一層、教育内容や特色で選ばれる時代になります。
これは、良い意味での競争を生む一方で、選ばれる学校と選ばれにくい学校の差が広がる可能性もあります。
教育機会の均等、学校選択の自由、公教育の維持・充実をどのように両立していくのか。
この点は、今後の重要な論点です。
通信制高校への対応も重要な論点
説明の中では、通信制高校への進学が増えていることにも触れられました。
近年、通信制高校は全国的にも広がりを見せています。
通学のあり方や学び方が多様化する中で、従来の全日制高校だけを前提にした制度設計では対応しきれない部分も出てきています。
大阪府でも、通信制高校については、国の制度改正との関係や、府独自制度の対象範囲をどう考えるかが論点となっていました。
横浜市においても、不登校支援や多様な学びの場の確保は重要な課題です。
高校段階の学び方が多様化する中で、通信制高校やサポート校、フリースクール等との関係も含め、子どもたちの学びをどう支えていくのかを考える必要があります。
横浜市にとっての論点
横浜市は基礎自治体であり、高校教育そのものの制度設計は主に国や県の所管です。
そのため、大阪府と同じ制度をそのまま横浜市が実施することはできません。
しかし、今回の視察から横浜市が学ぶべき視点は多くあります。
1.教育費負担をどう軽減するか
高校授業料だけでなく、教材費、制服代、通学費、部活動費、修学旅行費など、子育て世帯にはさまざまな教育費負担があります。
横浜市としても、子育て支援策全体の中で、どこに重点的に支援を行うべきかを考える必要があります。
2.家庭環境によって進路選択が左右されない仕組み
子どもたちが、自分の希望や適性に応じて進路を選べる環境を整えることは、行政の重要な責務です。
経済的な理由で選択肢が狭まることのないよう、国・県・市それぞれの役割を踏まえた支援が必要です。
3.教育の質と学校の魅力づくり
無償化だけでは、教育政策としては不十分です。
大切なのは、子どもたちが通いたいと思える学校、保護者が通わせたいと思える教育環境を整えることです。
横浜市でも、小中学校の教育環境、教員の働き方、学校施設の改善、特色ある教育活動など、教育の質を高める取組を進めていく必要があります。
4.少子化時代の公教育のあり方
少子化が進む中、学校の統廃合や再編、学校規模の適正化は避けて通れないテーマです。
一方で、地域における学校の役割は非常に大きく、単に効率性だけで判断できるものではありません。
教育の質、地域との関係、子どもたちの学びの環境を総合的に考える必要があります。
教育への投資は、未来への投資
少子化が進む中、子どもたちは地域社会の未来を支える、かけがえのない存在です。
教育への投資は、将来への投資です。
家庭の経済状況によって、子どもたちの進路や可能性が制限されることがあってはなりません。
子どもたちが夢や希望を持って学び、自らの可能性を最大限に発揮できる環境を整えることは、行政の重要な責務です。
大阪府の高校授業料無償化制度は、財源や制度設計において簡単に真似できるものではありません。
しかし、教育を将来への投資と位置付け、子どもたちの選択肢を広げようとする考え方は、横浜市においても大いに参考になります。
横浜市においても、教育費負担の軽減、教育の質の向上、学校の魅力づくりを一体的に進めていく必要があります。
今回の視察で得られた知見を、今後の横浜市の教育政策にしっかりと活かしてまいります。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
最後までご覧いただきありがとうございました。
日本維新の会横浜市会議員団・無所属の会
柏原すぐる

LINE公式アカウントで情報発信やご意見・問い合わせの受付を行っています。
ぜひお友達に追加してみてください。
へのフォローもよろしくお願いします。
日頃は、桜木町駅すぐそばにある横浜市役所6階にある議員室にいます。アクセスはこちら。
気軽にコンタクトくださいませ。
