【視察報告】大阪府の高校授業料無償化制度から考える、横浜市の教育費負担軽減と学校選択のあり方
こんにちは。
横浜市会議員、鶴見区選出の柏原すぐるです。
日本維新の会・無所属の会として、大阪府教育委員会を訪問し、高校授業料無償化制度について視察を行いました。

はじめに
大阪府における高校授業料無償化制度について、制度の概要、導入の経緯、財源の考え方、学校運営への影響、今後の教育政策上の課題について説明を受けました。
高校段階の教育費は、子育て世帯にとって大きな負担です。
特に私立高校を選択する場合、授業料だけでなく、施設整備費や入学時の費用なども含めると、家計への影響は決して小さくありません。
大阪府では、国の就学支援金制度に加えて、府独自の補助制度を組み合わせることで、家庭の経済状況にかかわらず、子どもたちが希望する学校を選択できる環境づくりを進めています。
横浜市においても、教育費負担の軽減、子育て世帯への支援、学校選択の公平性、そして公立学校の魅力向上は重要な政策課題です。
今回の視察では、大阪府の取組を単に「無償化」として見るのではなく、教育政策、子育て支援、財政運営、公私の役割分担という観点から、横浜市にどう活かせるかを考えました。
視察先
大阪府教育委員会
視察テーマ:高校授業料無償化制度について
日時:2026年6月22日
主な内容:
・大阪府の高校授業料無償化制度の概要
・所得制限撤廃に向けた制度設計
・国の就学支援金制度との関係
・私立高校、公立高校への影響
・財源確保と今後の運用課題
・教育の質向上に向けた効果検証
視察の主なポイント
今回の視察で特に重要だと感じた点は、次の5点です。
1つ目は、大阪府の制度が、国の就学支援金制度に府独自の補助を上乗せする形で設計されている点です。
国制度だけではカバーしきれない授業料等の負担について、大阪府が補助することで、実質的な無償化を進めています。
2つ目は、令和8年度までに所得制限のない完全無償化を目指している点です。
大阪府では、令和6年度の高校3年生から段階的に所得制限を撤廃し、令和8年度には全学年で所得制限のない無償化を実現する計画です。
3つ目は、授業料だけでなく、毎年徴収される施設整備費なども一定程度、支援対象としている点です。
単に「授業料」だけを見るのではなく、実際に保護者が負担している費用全体をどう軽減するかという視点が重要です。
4つ目は、無償化により私立高校への志願が増える一方で、公立高校の魅力向上が大きな課題になっている点です。
大阪府では、公立高校改革アクションプランを策定し、公立高校の特色化や広報力の強化にも取り組んでいます。
5つ目は、制度の効果検証を今後さらに強化しようとしている点です。
アンケート調査だけでなく、教育の質や進路選択への影響などを、定量的なデータで把握していく必要性が共有されました。
視察内容
1.大阪府の高校授業料無償化制度の背景
大阪府では、平成22年度に国の就学支援金制度が始まったことにあわせて、府独自の授業料支援制度をスタートさせました。
制度の目的は、家庭の経済状況にかかわらず、子どもたちが希望する学校を選択できる機会を保障することです。
当初は所得制限のある制度でしたが、段階的に支援対象を広げ、令和5年度時点では、約75%の世帯が何らかの支援対象となっていたとの説明がありました。
その後、所得制限のない高校授業料無償化を目指す方針が示され、令和6年度から段階的に新制度が始まっています。
2.制度の仕組み
国の就学支援金制度は、基本的に授業料を対象とする制度です。
一方、大阪府の制度では、国の支援金に加えて、府独自の補助金を上乗せすることで、実質的な授業料負担を軽減しています。
特徴的なのは、「授業料等」という考え方です。
大阪府では、授業料だけでなく、毎年徴収される施設整備費など、実質的に保護者が継続して負担している費用についても、一定の範囲で支援対象としています。
ただし、入学時に一括して納入する入学金や施設整備費については、制度上の取扱いが異なります。
この点は、保護者の実負担を考える上で重要な論点です。
「授業料は無償化されたが、実際には別の費用が重い」ということにならないよう、制度設計では授業料以外の費用も含めた実態把握が必要です。
3.令和8年度までの完全無償化に向けた流れ
大阪府では、令和8年度から全学年で所得制限のない無償化を実現する計画です。
実施方法としては、令和6年度は高校3年生から、令和7年度は高校2年生・3年生へ、令和8年度には高校1年生から3年生まで全学年へと広げる形を取っています。
通常、制度改正は1年生から始めることが多いですが、大阪府では高校3年生から始める「逆段階実施」の方法を採用しています。
これは、すでに高校に在学している生徒の進路選択や家計負担への影響を考慮したものです。
制度変更によって、学年ごとに不公平感が生じないようにする工夫の一つだと感じました。
4.財源と予算措置
大阪府の説明では、令和8年度の完全無償化にかかる総額は、推計で約383億円とされています。
財源については、他の事業を削減して捻出したというよりも、財政調整基金の活用など、大阪府独自の財政運営の積み重ねが背景にあるとの説明でした。
ここは横浜市にとっても大きな論点です。
教育無償化は、子育て支援として重要な政策である一方、継続的な財源が必要です。
一時的な財源で始めてしまうと、将来世代に負担を先送りすることにもなりかねません。
大阪府のような大規模な無償化政策を考える場合には、制度の理念だけでなく、財源の持続可能性、他の教育施策との優先順位、長期的な財政見通しをあわせて議論する必要があります。
5.私立高校への影響とキャップ制
無償化制度の拡充により、私立高校を選択しやすくなる一方で、学校側からは懸念も示されています。
特に議論となるのが、補助の上限を設ける「キャップ制」です。
授業料が高い学校や、特色ある教育のために多くの費用を必要とする学校にとっては、支援上限が固定されることで、経営の自由度が制限される可能性があります。
大阪府の説明では、標準授業料を60万円から63万円に見直すなど、学校に支払われる額を増やし、教育の質の維持・向上につなげる工夫も行われているとのことでした。
無償化は保護者負担を軽減する一方で、学校の教育活動の質をどう守るかという課題とセットで考える必要があります。
6.公立高校改革の必要性
私立高校の実質無償化が進むと、私立高校への志願者が増える傾向が出ます。
大阪府では、私立高校の志願者割合が制度導入後に高まり、制度創設以来初めて30%を超えたとの説明もありました。
一方で、公立高校にとっては、これまで以上に学校の特色や魅力を発信する必要が出てきます。
大阪府では、公立高校改革アクションプランを策定し、公立高校の魅力向上やPR強化に取り組んでいるとのことでした。
これは非常に重要な視点です。
無償化によって「どの学校も選びやすくなる」のであれば、公立高校も選ばれる努力をしなければなりません。
単に授業料を無償化するだけではなく、公立高校の教育内容、進学・就職支援、探究学習、地域連携、広報戦略をどう強化するかが問われます。
7.効果検証の重要性
大阪府では、私立高校に通う生徒を対象に、高校生活に関する満足度調査を毎年実施しているとの説明がありました。
無償化制度によって、家計の負担が軽減され、高校生活や進路選択に良い影響があったとする回答も一定程度見られるとのことです。
ただし、政策効果を正確に把握するには、アンケートだけでは十分ではありません。
無償化によって本当に進路選択の幅が広がったのか。
教育の質は向上したのか。
公立と私立の役割分担はどう変化したのか。
低所得世帯、中間所得世帯、高所得世帯で効果に違いはあるのか。
こうした点を、定量的なデータで継続的に検証していく必要があります。
大阪府でも、今後は教育の質などの指標を数値化し、比較可能な形で検証していきたいとの考えが示されました。
質疑応答
Q.施設整備費は、どのように支援対象となるのか。
A.毎年徴収される施設整備費については、授業料等とあわせて支援対象となる場合があるとの説明でした。一方、入学時に一括で納入する費用については、対象外となる扱いもあり、費用の性質や徴収方法によって整理されています。
Q.授業料が高い学校では、キャップ制による影響はないのか。
A.インターナショナルスクールなど、授業料が高い学校では、補助上限があることで経営上の課題が生じる可能性があるとの説明がありました。制度の趣旨は幅広い生徒の学びを支えることにありますが、すべての学校の費用を全額カバーすることは難しいという現実もあります。
Q.私立高校への志願が増える中で、公立高校はどう対応するのか。
A.大阪府では、公立高校改革アクションプランを策定し、公立高校の魅力向上や広報強化に取り組んでいるとの説明がありました。無償化によって学校選択の自由が広がるからこそ、公立高校も特色を明確にし、選ばれる学校づくりを進める必要があります。
Q.制度の効果はどのように検証しているのか。
A.これまでは高校生活に関するアンケート調査などを通じて、家計負担の軽減や進路選択への影響を把握してきたとのことです。今後は、教育の質や学びの成果なども含め、より客観的なデータによる検証が課題です。
Q.全国展開についてはどのように考えているのか。
A.当初は全国的な広がりも視野に入れていたものの、国の就学支援金制度の拡充により、府独自制度の全国展開には課題もあるとの説明でした。特に通信制高校については、国制度で一定程度カバーできる面もあり、今後の制度設計には慎重な検討が必要です。
横浜市への示唆
今回の視察から、横浜市にとって大きく3つの示唆があると感じました。
1.教育費負担の軽減を、子育て支援の柱として位置づけること
高校段階の教育費は、家計に大きな影響を与えます。
横浜市は政令指定都市であり、高校授業料制度そのものは国や県の制度との関係が大きい分野です。
しかし、子育て世帯の教育費負担をどう軽減するかは、横浜市にとっても重要な政策課題です。
高校授業料だけでなく、通学費、教材費、ICT機器、部活動、入学時費用など、子育て世帯が実際に負担している費用を把握し、どこに支援が必要なのかを整理する必要があります。
2.無償化と教育の質向上をセットで考えること
無償化は、保護者負担の軽減という意味では大きな効果があります。
一方で、財源を投入する以上、教育の質がどう向上したのか、子どもたちの選択肢がどう広がったのかを検証する必要があります。
横浜市でも、教育政策を進める際には、単に「支援を拡充した」という説明にとどまらず、どのような効果があったのかを市民にわかりやすく示すことが重要です。
特に、学力、進路、学校満足度、不登校、家庭の経済負担、地域差など、複数の指標を組み合わせて政策効果を検証する視点が必要です。
3.公立学校の魅力向上と広報力の強化
大阪府の事例からは、私立高校の無償化が進むほど、公立高校の魅力向上が重要になることがわかります。
これは横浜市の小中学校にも通じる論点です。
公立学校は、地域の子どもたちの学びを支える基盤です。
だからこそ、教育内容、学校施設、教員の働き方、地域連携、ICT活用、特別支援、不登校支援など、総合的に学校の魅力を高めていく必要があります。
また、良い取組をしていても、市民や保護者に伝わっていなければ、政策効果は十分に広がりません。
横浜市としても、学校現場の努力や特色ある教育活動を、よりわかりやすく発信する工夫が必要です。
所感
今回の視察を通じて、大阪府の高校授業料無償化は、単なる子育て支援策ではなく、教育の機会保障、学校選択、公私の役割分担、財政運営を含む大きな政策であると感じました。
所得制限をなくすことで、子どもたちが家庭の経済状況に左右されず、自分の進みたい道を選びやすくなることは大きな意義があります。
一方で、制度を持続可能なものにするためには、財源の確保、学校経営への影響、教育の質の検証が欠かせません。
また、私立高校への支援を拡充するのであれば、公立高校の存在意義や魅力向上も同時に考える必要があります。
横浜市においても、教育費負担の軽減は重要な課題です。
ただし、制度を導入する際には、理念だけでなく、財源、対象、効果検証、既存制度との関係を丁寧に整理する必要があります。
子育て世帯にとって本当に実感のある支援とは何か。
子どもたちの選択肢を広げるために、横浜市として何ができるのか。
今回の大阪府の取組は、横浜市の教育政策を考える上で多くの示唆がありました。
まとめ
今回の視察で確認したポイントは、次の通りです。
・大阪府では、国の就学支援金に府独自の補助を上乗せし、高校授業料等の無償化を進めていること
・令和8年度までに、全学年で所得制限のない完全無償化を目指していること
・授業料だけでなく、毎年徴収される施設整備費なども含めた実負担の軽減を意識していること
・私立高校への志願増加に伴い、公立高校改革と魅力発信が重要になっていること
・今後は、教育の質や進路選択への影響をデータで検証することが必要であること
横浜市でも、教育費負担の軽減、学校の魅力向上、子育て世帯への支援は重要な政策課題です。
今回の視察で得た知見を、横浜市の政策形成や議会での議論に活かし、市民にとってより実効性のある取組につなげてまいります。
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最後までご覧いただきありがとうございました。
日本維新の会横浜市会議員団・無所属の会
柏原すぐる

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