横浜みどり税はなぜ必要なのか?人口減少時代における新たな横浜グリーン戦略の立案を。

こんにちは。柏原すぐる(横浜市会議員・鶴見区選出)です。

今回は横浜市で平成21年から導入されている横浜みどり税に関して、令和6年から5年間の延長が議決される今日に考えを纏めたいと思います。

横浜みどり税とは?

 横浜市のHPでは、以下のように記載されています。

 緑豊かなまち横浜を次世代に継承することは重要な課題です。また、緑は一度失われると取り戻すことが困難です。
 横浜市では、緑を守り、つくり、育む取り組みを進める「横浜みどりアップ計画」の重要な財源の一部として、平成21年度から市民の皆様に「横浜みどり税」をご負担いただいています。
 また、横浜みどり税のほか、緑地や農地の維持管理負担の軽減を図り、一層の市街地などの緑化誘導や農地の維持保全を図ることを目的として、固定資産税等の軽減措置を設けています。

https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/koseki-zei-hoken/zeikin/y-shizei/midorizei/midorizei.html

誰がどれくらい負担しているのか?

個人と法人それぞれが負担しています。

①課税の方法(個人)

 市民税の均等割に年間900円を上乗せ。所得が一定金額以下で市民税均等割が課税されない方を除かれる。

②課税の方法(法人)

 市民税の年間均等割額の9%相当額を上乗せ。

どれくらいの税収になるのか?

年間で約28億円。個人約17億円、法人約11億円(令和3年度当初予算ベース)とのことです。

以上は、横浜市HPから引用しております。次期5年の横浜みどり税も同じ税率で条例が提案されております。(12/20議決)

横浜みどりアップ計画とは?

簡単に言えば、森や農を守ったり保つため、身近な緑や花を創出するための事業をまとめた計画の総称です。

具体的な事業内容はこちらの横浜市HPに掲載されている計画書が詳しいです。

▽横浜みどりアップ計画 横浜HP

https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/machizukuri-kankyo/midori-koen/midori_up/jigyou_houkoku.html

この計画自体は、横浜みどり税が導入された平成21年(2009)年をスタートとして、5か年計画として繰り返し改訂されてきました。下図の1,2,3の順です。

横浜みどり税のこれまでの経緯は?

 平成20年12月第四回定例会で議決され、平成21年度から横浜市では導入されました。5年の時限条例ですので、2回延長しており、今回は3回目の延長に関し是非を議論しているということになります。

こちら神奈川新聞の記事にあるように、私自身は政策・総務・財政委員会の委員として議論に参加して参りました。

https://www.kanaloco.jp/news/government/article-1043243.html

平成20年と言えば、2008年9月のリーマンショックにより、日本経済も落ち込みが始まった時期です。
ですので、当日の横浜市議会、常任委員会での議論を見ると、本当にこの時期に市民の負担を増やす増税をしてよいのか?といった視点に立った慎重論や反対意見も活発になされておりました。

 こちらの図をご覧ください。

みどりの政策の現状と課題(国交省資料より)

1960年から如何に横浜市の緑が失われてきたかが分かります。

 上のグラフでは、人口が増えるのと反比例するように、緑(樹林地)が減ってきたのが良くわかります。

 このグラフは1999年で終わっておりますので、この後10年後に初めて横浜みどり税が導入されたという経緯です。

 2004年以後、どのように山林面積が減ったかは下表の通りです。国交省調べの「樹林地」と横浜市の資料でいう「山林面積」の整合性の確認がとれておりませんが、数字からみて傾向を見る分には問題ないと思います。

緑の指標である緑被率も減り続けている

また、航空写真から300m2以上及び10㎡以上のまとまりのある緑を目視判読し、市域面積に占める割合を算定した緑被率の推移(みどり税導入後の5年ごとの推移)はご覧の通りです。

常任委員会でも指摘された通り、みどり税は「緑を減少を食い止めるため」に導入されたにも拘わらず、「下げ止まっていない」というのは確かに事実です。

横浜みどり税はどんな事業にいくら使っているのか?

 では、横浜みどり税は何に使われているのかと言えば、下記の通りです。

こちらは2024年~2028年の5か年の計画です。

どういう考え方で財源が充当されているかと言えば、基本となるのは横浜市の財政ビジョンです。

まずは国費を使える事業は国費を充当。

市債をもっと増やせば、横浜みどり税を含む一般財源が不要ではないか?という意見もありますが、将来世代に過度な負担を先送りしないようにせねばならず、抑制的な運用が求められ市債は本事業に関わらず過度な期待はできません。

国費、市債と一般財源でも足りない、通常の地方自治体の必要事業以上であるために、財源が不足する分に横浜みどり税を充当するというのが建付けです。

なお、こちらは横浜みどりアップ計画の第1期から次期計画の財源内訳を示した資料です。

横浜みどり税をどう捉えるか?「自立する地域」としてのアクションの1つ

 日本維新の会は、「地方から国の形を変えること」を目的に設立された唯一の“地方分権型”の政党です。また、「自立する個人、自立する地域、自立する国家」を理念に掲げ中央ており、省庁の持つ権限を大きく地方自治体に移譲し、日本の統治機構のあり方を中央集権体制から、地域のことは地域で決められる地方分権体制に移行すべきであると考えています。

日本維新の会が目指す日本の未来社会 

①地方主導による統治機構改革

 現代社会においては人々の生活様式の多様化が進み、地域ごとに抱える課題も細分化される中で、中央集権体制による画一的な政策が非効率な行政を生み出し、あるいは地域の実情に沿った課題解決につながらないといった問題が表面化している。

 日本維新の会はこの状況に鑑み、中央省庁の持つ権限を大きく地方自治体に移譲し、我が国の統治機構のあり方を中央集権体制から、地域のことは地域で決められる地方分権体制に移行すべきであると考える。

 それぞれに異なる課題と、異なる地理的、経済的、あるいは文化的背景を有する各地域が、各々の特性と課題に応じて主体的に政策決定を行い、自らの財源によって自立した自治体運営を行うことのできるよう、権限と財源をセットで国から地方へ移譲することが、現代社会において最も民主的で、かつ最も効率的な地方自治のあり方である。

 これらの統治機構の抜本的発想転換を、地方の主体的な政治努力によっ て実現することで、我々の目指す「自立する地域」のあるべき姿を将来に亘って獲得することができる。

日本維新の会 綱領

 今回の横浜みどり税は、地方自治体に認められた課税自主権を行使し、横浜市特有の政策課題である「緑を守り創出する」という明確な目的を伴った財源です。これは、自らの財源によって自立した自治体運営を行うことそのものであり、我が党が理念とする「自立する地域」としてのアクションであるとも言えると考えています。

国民、市民の負担が増えることについて、どう考えるか?

 とは言うものの、昨今の物価高や5割に達する国民負担率など、市民の負担がただでさえ多い中、超過課税により市民の負担を増やすことは一層慎重に考えるべきであることは言うまでもありません。

 ただ、この国民負担については、国が法律等に基づいて税や社会保険料のかたちで国民に対して負担を強いているものです。それゆえ、日本維新の会国会議員団は、緊急経済対策提言として社会保険料の減免などの可処分所得を増やす経済政策や毎年1兆円、2兆円と増え続ける社会補償給付費を抑制するための医療制度改革など、一層の改革を国から進めていくよう尽力しております。

経済対策策案の詳細はこちらです。

それでも、何とか財源をねん出できないのか?歳出改革の状況は?

12月7日に行われた議案関連質疑においては、この点を特に市長へ質しました。

その内容はこちらに詳しく掲載しています。

また、常任委員会においては、過去の歳出改革の状況を資料で提示してもらっています。

平成21年の横浜みどり税導入時の議論において確認されたそれ以前の歳出削減の取り組みに関しては、当時委員会資料として当局から提示されたこちらの5ページ目以降に記されており、6年間で906億円となっていました。

https://www.city.yokohama.lg.jp/shikai/kiroku/katsudo/h20-h21/katsudogaiyo-h20-j-1.files/0139_20180808.pdf

 歳出改革が実行されることは当然であり、より一層本市の発展を目指し、ご負担以上に資産と暮らしの質という付加価値で市民の皆さんにお返しすることが重要だと考えます。

 そして、横浜みどり税の効果を市民の皆さんが本市全域で感じることができる公平で未来志向の政策実行を期待したいと考えています。

横浜みどり税の使い道に見直しの余地はないのか?

 みどりアップ計画には課題もあると考えています。

みどりアップ計画(2024-2028)↓

https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/machizukuri-kankyo/midori-koen/midori_up/korekaranomidori.html

 横浜の緑に関する市民意識調査においては、「暮らしのなかで緑や花にどのような役割・効果を期待していますか」との問いに、6割の人が「身近に触れることで心身の癒しとなる場」と答えています。それゆえ、特に緑の少ない古くからある市街地などの都市部や臨海部において、みどり税を財源に積極に投資をすることや施策の見直し・拡充を一層図ることは重要です。

過去15年間の緑被率の減少要因と要因別の面積

 また、横浜市は既に人口減少時代に突入し、空き家が増え続けるトレンドにあっても、戸建てやマンションなどの宅地開発等の経済活動は続きます。こうした中にあっても、適切に規制すると共に、都市計画や地区の街づくり計画に実行性を持たせるために、財源や権限をより住民や暮らしに近いところへ持たせることも重要な視点です。

実際に古い市街地で起きているのは、庭木が豊富な古いお宅が解体されたと思えば、3.4軒の3階建ての戸建てが建てられて、緑が減っていく状況です。

 確かに安価で新しい住民や若い世代が住まう住宅が供給されることも子育てしやすい街としても重要ではありますが、息が詰まるように町中が寿司詰めで住宅が建てば、それは豊かな住空間と言えるのか?と言えば、答えは否だと思います。

 都筑区や青葉区のような丘陵地を切り開いてできたニュータウンは、開発当初から緑を残しながら、街路や民有地内にも十分緑を配置しながら計画が進められてきました。

港北ニュータウンのグリーン・マトリクス

このように、横浜市を一概に論じるのは難しいということです。

 このような理由からも、みどりアップ計画に留まらず、都市計画マスタープランの地区別計画に横浜におけるグリーン戦略をきっちり落とし込むと共に、芝生管理で言うグリーンキーパーのような権限と財源を各区に配置(または兼任)させるなど、まさに本市全域の細部に緑を宿す取り組みを現実のものにしていくことが重要でないかと思います。

2023年12月20日の議決で、横浜みどり税は5年延長へ

今回の横浜みどり税条例改正(同じ税率で5年間延長する主旨)の議案には付帯意見が付され、可決されました。

「努力を払われたい」という意見にどれだけの効力があるのか、という疑義は確かにぬぐえません。ただ、課題や改善点がゼロな政策や事業、市政運営はありません。人がやる限りにおいてはミスや事故は完全になくならないけれど、重大な事故を未然に防ぐ仕組みや工夫、機械化などで少しでもマシに改善していくのが、人間社会の在り様ではないかと思っています。

今回は横浜みどり税すなわち「緑」にフォーカスしましたが、先に触れましたように、他の横浜市の事業や法令や条例等を遵守した自由な経済活動と表裏一体のものです。

 横浜をただの東京圏に終わらせず、「一極」に相応しい他にはない価値の創出をどうやっていくか。 

 これから改訂される都市計画マスタープラン、あるいは「水と緑の基本計画」といった上位の横浜市のビジョンやプランにおいて、どのようにこの緑が位置づけられるのかを注視すると共に、身近な緑は具体的な誰かの活動で守られ、育てられているわけですから、そうした活動に私自身も身をおきながら、政策提言に活かしていきたいと思います。

最後までお付き合いありがとうございました。

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最後までご覧いただきありがとうございました。

柏原すぐる

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