【横浜市長選挙2026】山本理顕候補の「観光収入5,000億円→1兆円」は可能か?4年間の客数・宿泊・税収を試算

こんにちは。横浜市会議員(鶴見区)の柏原すぐるです。

横浜市長選挙2026、観光消費額5,000億円から1兆円への倍増を宿泊・日帰り・税収から試算

横浜市長選挙で、山本理顕候補が観光分野の大きな目標を掲げています。地域経済を元気にし、市民の所得や市の財源を増やすという方向性は、私も大切だと考えています。その上で、目標を実現するには、どれだけの観光客、宿泊容量、時間が必要なのか。公開資料をもとに試算しました。

今回の試算では、日帰り客も過去のペースで増え、消費単価も年2%上昇すると仮定します。それでも4年間で1兆円に到達するには、宿泊客を現在の約2.4倍へ増やすか、物価上昇を超える消費単価の引上げなどが必要になります。

「4年間」はこの記事で設定した検討期間です。山本候補の公式サイトに記載された目標について、この記事では達成期限が4年と断定しません。また、以下の計算は候補者の事業計画を再現したものではなく、条件を置いた参考試算です。

山本候補の構想には、空き家活用と共同建て替えもある

山本候補の公式サイトでは、観光の規模を約5,000億円から1兆円へ拡大する目標とともに、滞在型の拠点などを掲げています。さらに、木造密集地域の共同建て替えで1万5,000戸、空き家修繕で1万7,000戸、計3万2,000戸の宿泊施設を確保し、町内会サロンが管理する構想が説明されています。

したがって、この政策を考える際には、新築ホテルの誘致だけでなく、既存の住宅ストックを活用する可能性も見る必要があります。一方、「宿泊施設として使える戸数」「受け入れられる人数」「年間の稼働率」は、それぞれ確認が必要な数字です。

「観光収入」は、市の税収とは分けて考える

この記事では、市の公表する観光消費額を分析対象にします。2025年の横浜市は5,077億円で、宿泊客による消費が2,773億円、日帰り客が2,304億円でした。宿泊・飲食・買物などに使われる金額であり、その全額が横浜市の収入になるわけではありません。出典:横浜市・2025年観光集客指標。

増えた消費が地域の賃金、事業者の利益、税収へどれだけつながるかを確認することが、市民の暮らしにとっての効果を考える上で重要です。

物価が上がっても、4年間の倍増には大きな需要拡大が必要

2026年10月15日時点で最新の全国消費者物価指数は、8月の総合で前年同月比1.9%上昇です。これを参考に、基本ケースを年2%、比較ケースを年3%・4%としました。一般的な消費者物価と観光サービス価格は一致しませんが、今回は観光消費単価も同じ率で上がると置きます。出典:総務省統計局・全国消費者物価指数。

年間の単価上昇率5,077億円が物価上昇だけで増えた場合の4年後1兆円へ届くために必要な、価格上昇以外の拡大
2%約5,496億円約82%増
3%約5,714億円約75%増
4%約5,939億円約68%増

5,077億円から4年間で1兆円へ到達するには、名目で毎年約18.5%の成長が必要です。年2%の価格上昇を除いても、客数・泊数・消費内容などを毎年約16.1%ずつ拡大する計算になります。値上がりによる増加と、地域経済の実質的な拡大を分けて評価したいと考えています。

日帰り客も増える前提で計算する

年日帰り客宿泊客
2023年約3,220万人約380万人
2024年約3,263万人約511万人
2025年約3,414万人約501万人

出典:横浜市の2023年、2024年、2025年の観光集客指標。2023~2025年の年平均伸び率は、日帰り客が約3.0%、宿泊客が約14.8%です。宿泊客は2024年に大きく増え、2025年には減っており、この平均値を安定した成長率とみなすことはできません。宿泊施設の集計対象も各年で異なります。

基本ケースは、日帰り客がこの2年間の年平均ペースで増え、1人当たり消費額は年2%上昇するものとします。宿泊客の消費単価も年2%上昇、平均宿泊数は2025年の2.14泊で固定しました。消費内容の高度化による上積みは、別途検討すべきものとして置いていません。

指標2025年実績4年後に1兆円を達成する場合
日帰り客約3,414万人約3,838万人
日帰り客の消費額2,304億円約2,803億円
宿泊客の消費額2,773億円約7,197億円
宿泊客約501万人約1,202万人
合計消費額5,077億円1兆円

日帰り客の増加を織り込んでも、宿泊客は4年間で約2.4倍、年平均で約24.4%増が必要になります。宿泊客の属性は外国人に限りません。国内客も含めた受入需要の計算です。

追加の宿泊容量は、どれくらい必要か

上の条件では、追加宿泊客は年間約701万人、追加の延べ宿泊数は約1,500万人泊です。稼働率85%・1室平均1.5人と置くと、約3万2,200室の客室に相当する容量が必要です。300室のホテルなら約107棟分に当たります。

これは新築ホテルが107棟必要という意味ではありません。既存施設の余力、予定されている開業、空き家や住宅の活用などで受け入れる分を差し引く前の「追加需要を賄う容量」です。山本候補の3万2,000戸という構想とも、戸数と客室数、定員、利用日数の定義をそろえて比較する必要があります。

横浜市内主要ホテルの2025年平均稼働率は84.7%です。この調査対象では既に高い稼働率で、客室を増やさずに需要を大幅に増やせる余地は限られます。ただし、この数字を市内の全宿泊施設の稼働率とは扱いません。出典:横浜市内主要ホテル平均稼働率。

日帰り客を直近2024~2025年のペースである年約4.6%増とした場合でも、追加の客室相当数は約3万800室となります。一方、日帰りの買物・飲食・体験単価を高めれば、宿泊客に求める増加幅を小さくできます。

過去の客数の伸びが続けば、4年後は約8,020億円

日帰り客を年約3%増、宿泊客を年約14.8%増、双方の消費単価を年2%上昇として延長すると、4年後の年間消費額は約8,020億円です。1兆円との差は約1,980億円になります。

この計算でも、短期間の宿泊客の伸びが4年間続くという強い仮定を置いています。1兆円に達するには、客数をさらに増やす、滞在を長くする、高い価値のある飲食・買物・体験を増やす、といった具体的な事業の積上げが必要です。

4年間で、宿泊施設の整備と稼働まで進められるか

時間軸を考える参考例として、横浜ロイヤルパークホテルは2025年3月末に休業・大規模改修に着手し、再開業は2028年度を予定しています。既存施設の改修でも数年を要する例です。空き家改修に同じ期間が必要という意味ではありませんが、整備と営業開始を分けて考える必要があります。出典:三菱地所・大規模リニューアル工事着工の発表。

空き家活用でも、所有者の意向、取得・修繕費、安全性、宿泊施設としての手続、運営者、交通アクセス、近隣との調整、清掃や接客の人員を確認する必要があります。共同建て替えでは、関係する権利者との調整も工程に入ります。

1年目に調査・事業者調整、2年目に設計や修繕着手、3~4年目に営業開始という工程なら、消費増は任期後半に偏ります。4年目の途中で開業した施設は、その年に1年分の売上を生むわけでもありません。既に進んでいる事業と、就任後に新たに始める事業を区別して見たいと思います。

札幌市の事例を参考に、市の税収効果を試算

札幌市の令和6年度観光産業経済効果調査(概要版)は、観光消費額6,584億円に対し、市税の効果を直接分177億円、波及効果込み267億円と推計しています。消費額に対する比率は約2.69%、約4.06%です。

この比率を横浜に借用した参考計算が次の表です。札幌の消費構成・産業構造・税収の関係を横浜に移すため、横浜市の正式な増収予測にはなりません。また、既存の観光経済が支える平均的な税収効果と、追加消費による限界的な増収は同じとは限りません。

4年後の年間消費額5,077億円からの増加直接税収効果の増加/年波及効果込みの増加/年
約8,020億円(過去の客数の伸びを延長)約2,945億円約79億円約119億円
1兆円(目標達成)4,923億円約132億円約200億円

直接分は観光客の支出に対応する効果、波及込みは仕入先の取引や家計消費への波及も含む効果です。両者を足し合わせません。ここでいう「直接」は消費税だけという意味でもありません。

仮に消費増に対する税収効果を6%と置くと、4,923億円の増加に対し約295億円/年になります。ただし、横浜で6%を採用する根拠や対象税目は未確認です。税率と消費額に対する税収効果の比率を混同せず、根拠の提示が必要だと考えます。

税収が増える時期は、消費が増える時期より遅れる

仮に毎年同じ成長率で順調に1兆円へ向かう場合、消費が発生した年に対応する税収効果は次のようになります。宿泊容量の確保が後半に偏る場合、この経路より初期の効果は小さくなります。

時点年間観光消費額基準年との差に対応する直接税収効果波及効果込み
1年目6,015億円約25億円約38億円
2年目7,125億円約55億円約83億円
3年目8,441億円約90億円約136億円
4年目10,000億円約132億円約200億円

これは、その年に市の会計へ入金される税額の表ではありません。個人市民税は前年所得に対する課税で、給与所得者では翌年6月から納付が始まります。4年目の雇用・給与増による税収の一部は、次の任期に入ります。出典:横浜市・個人の市民税・県民税について。

また、売上が増えても、仕入れ・人件費・借入利息などが増えれば、利益や課税所得が同じ割合で増えるとは限りません。市外在住の従業員の所得や企業の課税先にも左右されます。

増収とともに、追加の財政支出も確かめたい

今回、追加の財政支出の金額は算出していません。構想にある住宅取得・改修・建て替え支援の費用を、誰がどれだけ負担するかが未確定だからです。誘客・案内、交通、清掃、公衆トイレ、地域との調整などの経費についても、事業計画に応じた積算が必要です。

参考として2026年度の市の予算概要には、DMO推進事業約6.28億円、観光振興事業約2.33億円があります。これらは既存の事業予算であり、1兆円達成に必要な追加費用の推計ではありません。出典:横浜市・にぎわいスポーツ文化局予算概要。

財政への効果を考える際は、税収効果から追加の市負担を差し引く必要があります。一方で、雇用や市民所得の増加という地域経済への価値も、財政収支とは別に評価することが大切です。

目標とともに、市民に示してほしい実現までの工程

観光消費額1兆円という目標の可否は、この単純試算だけで断定できません。空き家活用や滞在型観光が、地域経済に新しい価値を生む可能性もあります。だからこそ、各年の客数・泊数・単価、営業できる宿泊容量、整備と運営の担い手、民間投資と市負担、税収が入る年度まで示すことが重要です。

私は、横浜市会議員の一人として、市民の皆さまが政策を具体的に比較できるよう、根拠に基づく情報提供を続けてまいります。市民の暮らしにどのような効果が届くのか、議会でも丁寧に確認していきます。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

試算の注記・資料

客数の伸び率は2023~2025年の幾何平均で算出しました。4年後の単価は2025年単価×1.02の4乗です。目標から日帰り客の消費額を差し引いて必要な宿泊消費額を求め、宿泊単価で割って必要客数を算出しています。客室相当数は追加宿泊客×2.14泊÷(365日×稼働率85%×1室1.5人)。公表数値の丸めにより計算結果に小さな差が生じます。新築時の一時的な経済効果や、新税導入の効果は含めていません。

資料確認日:2026年10月15日。統計のまとめ:横浜市・観光に関する調査・統計データ。価格上昇・客数・稼働率などは将来の保証ではなく、試算条件です。

おすすめ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 ※ が付いている欄は必須項目です

キャプチャを読み込んでいます...