【行政視察】大阪府教育庁「府立学校におけるいじめ対策」~横浜市の参考になるのは何?~
こんにちは。柏原すぐる(横浜市会議員・鶴見区選出)です。
常任委員会視察2日目の午後は大阪府教育庁において、「府立学校におけるいじめ対策」を視察しました。

日時: 2025年10月30日(木)午後2:00~
視察先: 大阪府議会、大阪府庁
テーマ: 府立学校におけるいじめ対策について
所属委員会: 横浜市会 こども青少年・教育委員会
府立学校の概要
大阪府立学校は、令和7年度時点で以下のとおりです。
| 区分 | 学校数 | 生徒数 |
|---|---|---|
| 府立高等学校(全日制・定時制・通信制含む) | 164校 | 103,705人 |
| 府立中学校(併設型中高一貫校) | 3校 | 841人 |
| 府立支援学校 | 47校 | — |
| 合計 | 214校 | 104,546人 |
(出典:大阪府教育庁高等学校課 令和7年5月1日現在)
以前、大阪市立高校が大阪府に移管されて、府立に一元化した経緯があります。
いじめの発生状況
令和5年度の大阪府内における国公私立高校のいじめ認知件数は574件、
千人あたり2.9件で、全国的には「少ない方から8番目」に位置します。
ただし大阪府では、この数字を「まだ表面化していない事案が多い」と捉え、
学校現場での把握と報告の促進を図っているとのことでした。
府立高校の千人率の推移を見ると、平成26年度以降は全国公立の平均を下回るものの、
近年上昇傾向にあり、令和5年度には 4.5(全国公立平均7.3) に達しています。
背景には、SNSを介した見えにくいいじめ(仲間外れ、既読スルー、悪口等)の増加があります。

大阪府のいじめ防止基本方針(令和4年4月改訂)
大阪府では、「いじめ防止対策推進法」に基づき、
平成26年に「大阪府いじめ防止基本方針」を策定、令和4年4月に改訂しました。
この基本方針は、府全体としてのいじめ対策の総合方針を定めたもので、
以下のような関係機関が連携して取組を推進しています。
- 府立・私立学校
- 大阪府教育庁
- 知事部局
- 大阪府警察本部
- 大阪法務局
これらが参加する「大阪府いじめ問題対策関係機関連絡会議」を通じ、情報交換や連携調整を行っています。
早期発見に向けたアンケートとICT活用
府立高校・中学校では、**1人1台端末を活用した「いじめ等アンケート」**を実施しています。
アンケートは教育庁がフォーマットを作成し、各校が児童生徒の実態に合わせて質問の語尾を調整しながら、
**年3回(最終学年は年2回以上)**の頻度で行われます。
目的は、
- いじめの未然防止・早期発見
- 小さな兆候の把握
- 積極的な認知の促進
回答項目には「ひやかし・悪口」「仲間外れ」「危険なことをさせられる」などがあり、自由記述欄ではいじめ・セクハラ・体罰に関する懸念も記入できます。
これとは、別にセクハラ等アンケートとして、教員によるいじめやパワハラ等に関して答えるアンケートもあるとのことです。以前、大阪市立高校の部活のおいて教員の体罰により自死した事案がありましたので、二度とこのような事案が起きない対策が求められます。
多様な相談窓口の設置
また、大阪府では、児童生徒や保護者が相談しやすいよう、複数の相談窓口を整備しています。
- 📞 すこやか教育相談24(24時間電話相談)
- 💬 すこやか相談@大阪府(LINE相談)
- 🧑🏫 大阪府教育センター 教育相談
- 👧 すこやかホットライン(子ども向け電話)
- 👪 さわやかホットライン(保護者向け電話)
- 🌐 ネットハーモニー(インターネット誹謗中傷・トラブル相談)
相談は匿名でも受け付けており、内容に応じて教育庁の専門部署へ連携される仕組みとなっています。ここは横浜市での取り組みと似通っている取り組みです。
なお、大阪府寝屋川市において、いじめを人権問題と捉えた市長部局においた監察課により、いじめ対策を行っている点については、大阪府教育庁からのコメントはもらえませんでした。
「いじめ初期対応のてびき」(令和7年4月改訂)
府立学校における初期対応の課題を踏まえ、
「いじめ初期対応のてびき」が令和6年に作成され、令和7年4月に改訂されました。
その位置づけはこちらの図解が分かりやすいです。

主な構成は以下の通りです。
- はじめに
- いじめとは
- いじめを早期発見するために
- いじめ初期対応の5つのポイント
- いじめ対応の基本的な流れ
- いじめ対応のフローチャート
- 初期対応に課題のある事例
- 参考資料
- セルフチェックシート
特徴的なポイント
- 「なぜその対応が重要か」を示す「CHECK」欄を設け、教職員が対応の背景を理解しやすくしています。
- 実際のいじめ事案4件を取り上げ、初期対応の遅れや保護者対応の課題などを具体的に示しています。
- 被害生徒・加害生徒双方の心理的背景に寄り添い、教員の抱え込みを防ぐ「チーム学校」体制を強調しています。
このように、新人研修などでもワークシートとして使える内容になっており、6年に作成したものを7年には改定するなど、このてびきを通じた現場の教員を支援し、落とし込む工夫は大変参考になるものと思います。

重大事態への対応
いじめ重大事態が発生した場合の流れは次のとおりです。
- 学校が教育庁に報告
- 教育庁が知事に報告
- 「いじめ防止対策推進法」に基づき、
学校設置者または学校が調査を実施 - 府立学校の場合は、
「大阪府立学校いじめ防止対策等審議会」が調査を行い報告
重大事態とは、児童生徒の生命・身体・財産への重大な被害、または長期欠席等に至るような深刻な事案を指します。
また、いじめ防止対策推進法第28条に基づく重大事態は、大きく次の2つに区分されます。
- 第1号重大事態:いじめにより、児童生徒の生命、心身、または財産に重大な被害が生じた場合
- 第2号重大事態:いじめを受けた児童生徒が長期欠席(30日以上)に至った場合、または生命・身体に重大な危険が生じたおそれがある場合
大阪府内の府立学校では、令和5年度・令和6年度ともに各18件の重大事態が発生しています。この内のほとんどが2号案件であるため、学校が調査を実施しており、学校設置者(が設置する審議会)が調査した重大事態は元年以降4件とのことです。
私学におけるいじめもこの重大事態調査の対象ではありますが、これまでに事案はないとのことです。
なお、これらの調査に関して、保護者等が再調査を求める場合に、知事が必要と判断する場合は、知事部局側で「大阪府立学校等のいじめの重大事態に係る再調査委員会」にて再調査が行われいます。HPを見た限りにおいては、一件が再調査中であると理解しました。
この点、横浜市も同様であり、市長部局の市民局に付属する横浜市いじめ問題調査委員会が再調査を担っており、現在も再調査が行われています。
所感と横浜市への示唆
大阪府の取組は、デジタルツールを活用した実態把握と初期対応の強化が特長でした。この点は、横浜市でもこども青少年局など局を超えた対応が為されています。
一方、いじめ初期対応のてびきのように、現場の即応力を高める仕組みは横浜市でも参考になりますし、より良くするために不断の努力として改定していく姿勢は何よりも参考になるのではないでしょうか。
横浜市でも令和7年5月に「横浜市いじめ防止基本方針」を改定したところですが、それに伴う現場での対応をしっかりと教職員が担えるような取り組みが今後も重要になるのではないでしょうか。
ちょうど、令和6年度「いじめ・暴力」・「長期欠席」等の状況調査結果が公表されたところです。

新年度から不登校支援・いじめ対策部を新設するなど体制整備を進めていますが、対策がどのように効果を発揮しているのか今後も注視して参ります。
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最後までご覧いただきありがとうございました。
日本維新の会横浜市会議員団・無所属の会
柏原すぐる

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